■ 坐禅堂へ入る

 叉手(しゃしゅ:左手の親指を包み込むように握り、手の甲を外に向け、右の手のひらを左手の甲に重ね、みぞおちの辺りにおく)をして静かに入ります。入り方は、入り口の左側によって、左足から入ります。(出るときは反対の右足から出ます。)
 坐禅堂に入ったら立ち止まり、聖僧(しょうそう)様に合掌低頭(手を合わせ礼拝)。手を叉手に戻して自分の坐る位置まで静かに歩きます。
 まず、自分の坐る場所(坐位)に向かって合掌低頭、次いで右回りに後ろを向き、向かい側の人に合掌低頭します。
 そして、単(たん:畳の敷かれた台)に上がり、自分の履物を揃えます。坐蒲の上に腰をおろし、足を組み右回りで壁に向かい坐ります。


■ 足を組む

 まず、背骨の元(腰の芯)が中心となるように、坐蒲をおしりの下に敷き、足を組みます。
 足の組み方は、右の足を左のももの上に深くのせ、次に左の足を右のももの上にのせます。この坐り方を結跏趺坐(けっかふざ)といいます。また、左の足を右のももの上にのせるだけの坐り方を半跏趺坐(はんかふざ)といいます。
 足が組めたら衣服を整えて坐ります。


■ 背筋を伸ばす

 背筋をまっすぐに伸ばし、頭のつむじから上に引っ張られるような気持ちで、あごをひき、肩の力をぬき、腰を入れます。
 この時、耳と肩、鼻と臍(ほぞ)が垂直になるようにして、前後左右に傾かないように気をつけます。


■ 手を組む

 右手の甲を左の足の上に置き、その右手の掌の上に左手の甲をのせて(右手の指と左手の指が重なるように)、両手の親指を合わせ、掌と親指の間がきれいな卵形になるように整えます。この時、親指はかすかに触れる程度で、決して力を入れて押したり、離れたりすることのない様に気をつけます。この手のかたちを法界定印(ほっかいじょういん)といいます。
 組み合わせた手はへその辺りにつけ、わきの下は腕と胸の間をあけ楽な形にします。


■ 口をとじる

 くちびるをひきしめて、舌先は軽く下の前歯の付け根につけて、口を閉じ、口の中に空気がこもらないようにします。


■ 目線をおとす

 「目を常にひらくべし」とあるように、決して目を閉じてはいけません。半目(はんもく)といいますが、見開くのと閉じるのとのあいだが理想です。視線はおよそ1メートル前方、半畳先におとします。


■ 息を整える

 呼吸は、静かにゆっくりと鼻でします。皆様それぞれの速度で、ていねいに呼吸することが大切です。まず静かにゆっくりとおなかの底からはき、はき終わって、また静かにゆっくりとおなかの底までゆきわたるように吸い込むのです。一般的な腹式呼吸と同じかたちです。


■ 心を整える

 心は空っぽにすることが目標です。じっと坐っていると、色々な想いが頭の中をめぐることがありますが、そのような想いにとらわれたり、追いかけたりしないように気をつけましょう。
 イライラしたり、落ち着きのないような時は、眉間や鼻端(びたん)に集中し、心を法界定印の手のひらにおきます。法界定印はまさに心の形とも言われ、心が乱れると尖がったり、つぶれたりしてしまいます。心を整えるように法界定印の形を整えるようにしましょう。


■ 坐禅のはじまり

 壁に向かって足を組み、手に法界定印を結び、身体を浮かすようにして静かに深々と大きく呼吸を一回します。これを欠気一息(かんきいっそく)といいます。
 次に、腰の骨と筋肉を伸ばし、上体をはじめは左右へ大きくだんだん小さく揺れながら、正中に落ち着かせてどっかりと坐ります。あたかも振り子がはじめは大きく揺れ、次第に揺れが小さくなって最後に中心で静止するようなイメージです。これを左右揺振(さゆうようしん)といいます。


■ 坐禅のおわり

 まず合掌し、坐禅のはじまりと同じく、上体を左右に、今度は、はじめ小さくだんだん大きく揺り動かし、体をほぐしたのち、右回りして向きをかえます。
 そして、手で組んだ足をとき、単から降ります。立ち上がったら、坐蒲をよくもみほぐし、元のように直します。
 直し終わったら、自分の坐位(坐っていた場所)に向かって合掌低頭、右回りして対坐(向かい側)の人に合掌低頭、そして合掌を叉手に戻して退堂します。


■ 警策(きょうさく)

 警策を受ける時は、最初にまず右肩にかるく警策をあてます。その時、受ける方は合掌して首を左前へ倒します。すると、右肩に頂きます。どんな場合でも警策は右の肩に入れます。
 警策を受け終わったら、体を元に戻し、合掌のまま低頭し、また元の法界定印に戻し、坐禅に入ります。
 警策は通常、ねむくなったり、心が乱れる場合に自ら警策を求める時と、ねむってしまったり、落ち着きがなかったりする方に、直堂(じきどう)という坐禅堂の監督役から入れる時の二通りがあります。
 これら以外に、禅策(ぜんさく)といい、坐禅に励む姿に激励の意味で策を頂く時があります。警策のような力ではありませんが、受け方は同じです。